研究概要 |
歯周炎はプラーク中に含まれる歯周病原性細菌により惹起される慢性炎症性疾患でT細胞などの免疫担当細胞と線維芽細胞との複雑な相互作用によって病変が形成されているが報告されている。Tumour necrosis factor(TNF)-like weak inducer of apoptosis(TWEAK)はTNF familyのサイトカインの一種であり、細胞増殖、血管新生、炎症、アポトーシスなどに関与している多機能なサイトカインとして知られているが、歯周炎での発現ならびにその役割については明らかとなっていない。本研究ではTWEAKおよびそのレセプターであるFn14に着目し、歯周炎病変局所でのTWEAKおよびFn14発現の解析、ならびに歯周組織の主な構成細胞の一つであるヒト歯肉線維芽細胞(HGF)に対するTWEAKの影響について解析を行った。 免疫組織化学的解析により歯周炎病変局所においてHGFはFn14を発現しており、同一部位にTWEAKが発現していることが明らかとなった。また、in vitroの実験により、TWEAKはHGFにケモカインの一種であるIL-8ならびに血管新生に関与しているVEGFの産生を誘導した。また、TGF-β1やIL-1βとTWEAKを用いHGFを共刺激すると、IL-8ならびにVEGF産生は相乗的に増強された。さらに、接着分子の一種であるICAM-1ならびにVCAM-1発現もTWEAK刺激により濃度依存的にHGF上に誘導された。 これらのことより、TWEAKはHGFに好中球の遊走に関与しているIL-8,血管新生に関与しているVEGFならびに炎症性細胞浸潤に関与しているICAM-1やVCAM-1を誘導することにより、歯周炎病変局所において炎症の発症、増悪に関与している可能性が示唆され、歯周炎治療においてTWEAKがターゲットとなる可能性も示唆された。
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