本研究の目的は、イヌの歯に実験的歯周炎を惹起させ、その歯の歯周組織の変化を検討することである。 本研究は、4頭のビーグル犬を用いて、ナイロン製のデンタルフロスを歯肉溝内に4週間結紫し、その後、4、5週目に局所麻酔下にてルートプレーニング(RP)を行った。同時にTooth cleaningを週3回、4から12週目まで行った。垂直的変位量の測定は、イヌのP3の根面板の上面と測定用ステントの下面との間にトレーを用いて、頬側からシリコンラバー系印象材を填入し、印象採得を行い、この印象面を根面板の中心部で近遠心的に切断し、ステントの下端から根面板の端の近心、中央、遠心の3点付近へそれぞれ下ろした垂線の長さを読み取り顕微鏡で測定し、その3点の平均値を算出した。組織学的観察は、P3を中心とした歯周組織を一塊として切り出し、上昇アルコール系列で脱水を行い、リゴラック樹脂に包埋し、近遠心側方向に100μmにて組織切片を作製し、methlenblue-fuchsin重染色を行った。 骨の動態を捉えるための実験開始8および12週目にCalceinを2日間にわたり筋肉内注射を行い、骨のラベリングを行った。測定は、根尖の近心、遠心の2点付近から新生骨へそれぞれ下ろした垂線の長さを蛍光顕微鏡で測定した。 本研究の結果、実験的歯周炎を惹起すると、0.8mmの垂直挺出、PRを行うと、1周目で01.16mm、2週目で0.14mmの垂直挺出、歯周組織が安定すると垂直挺出の減少を認めた。 組織学的評価は、実験群では、根尖の骨の増加は近心側では0.3±0.05mm、遠心側では、0.3±0.07mm、健康群(12週間Tooth cleaningのみ)は、近心側では0.0±0.01m、遠心側では、0.3±0.01mmであった。各々について、Welch's t testを用いて統計処理を行うと、それぞれp=0.02で有意に新生骨の増加を認めた。 本研究の結果は、炎症の状態とRPは、歯の挺出に関係することが解った。このように、歯周疾患罹患歯におけるRPの歯の移動と根尖の骨の増加の関係を明らかにし、炎症状態に影響することが示唆された。
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