本年度の研究計画は細胞凝集塊(スフェロイド)の形成条件の決定であった。その検索方法として、三次元培養3日、7日、14日後の細胞凝集塊(スフェロイド)を作製し、免疫組織化学的検索を行った。凍結切片を作製した後、FDA-PIでのスフェロイド中の細胞の生死判定を行ったところ、表層部の細胞のほとんどに活性が認められたが、深層においては活性がなかった。抗ヒト-I、コラーゲン複合抗体は表層から一層内面の細胞に反応が認められ、コラーゲンの存在が示唆された。超微細構造学的には透過型電子顕微鏡をもちいて観察を行った。三次元培養3日目のスフェロイドは表層、深層とも細胞の形態に異常形態やネクローシス様形態は認められなかった。コラーゲンの産生も確認でき、細胞凝集塊(スフェロイド)は自己で再生の足場であるコラーゲンを供給していると推察できた。7日目、14日目の細胞凝集塊(スフェロイド)はコラーゲンが非常に豊富で、細胞数は減少していた。しかし、表層部では細胞は少ないながらも、形態学的に問題はなかった。深層においてはネクローシスを起こした細胞が多数認められ、移植材としては不適当だと推測する。 研究の目的は細胞凝集塊(スフェロイド)の生体に移植するためにもっとも良い状態を検索し、決定していくことであるが、免疫組織化学的、超微細構造学的に三次元培養3日後の細胞凝集塊(スフェロイド)中の細胞の状態が生物活性に富み、生体移植に適していると結論づけた。
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