研究課題
本疫学研究のフィールドである岩手県大泊町において55歳以上の一般住民150余名を対象に歯科検診を行った。対象者に対しては、歯科検診の他、頭部MRI撮影および各種医科学検査も行われた。本年度は、それらの調査結果から無症候性脳血管障害と口腔状態の関連についての検討を行った。無症候性脳血管障害の指標にはMRI画像から得られたラクナ梗塞と脳室周囲高信号域(PVH)の有無を用いると同時に、口腔状態の指標としては現在歯数、咬合支持、CPI、アタッチメントロス(AL)を用いた.単変量解析の結果、咬合支持なしの群では咬合支持ありの群に比べ統計学的有意にラクナ梗塞を有しており、また、AL6mm以上の群は6mm以下の群に比べ統計学的有意にPVHを有していた。しかし、これらの因子が年齢・性別などの対象者背景や無症候性脳血管障害に関わる他の危険因子と相互に関与している可能性が考えられたため、各種危険因子を同一モデルに入れた多重ロジスティック回帰分析を行った。ラクナ梗塞の有無に関して、主要な危険因子である年齢、性別、BMI、糖尿病既往、高脂血症既往、喫煙、飲酒、降圧薬服用、家庭収縮期血圧に咬合支持の有無を加えたモデルに入れてオッズ比を算出した。その結果、年齢のみが他の危険因子と独立してラクナ梗塞を有する有意なオッズ比上昇を示し、咬合支持ありのラクナ梗塞を有するオッズ比は、1.68(95%信頼区間:0.93-3.13)となり有意ではなかった。一方、PVHに関して同様の危険因子とALを同じモテルに入れてオッズ比を算出したところ、年齢とALが他の危険因子と独立してPVHを有する有意なオッズ比上昇を示し、AL6mm以上のPVHを有するオッズ比は1.17(95%信頼区間:1.06-3.04)であった。以上の結果から、AL6mm以上がPVHの危険因子、あるいは予測因子である可能性を示した。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Journal of Dental Research 85(3)
ページ: 245-250
東北大学歯学雑誌 24巻第1号
ページ: 16-23