研究課題
本研究の目的は、高コレステロールの摂取による歯周病増悪の機序を組織学的に解明することである。平成17年度は、歯周病モデルラットに対して標準食もしくは高コレステロール食を8週間与え、両群における炎症性サイトカイン[Interleukin-1 beta(IL-1 beta)とtumour necrosis factor alpha(TNF-alpha)]の発現を比較検討した。なお、IL-1 betaとTNF-alphaは免疫染色によって発現させた。光学顕微鏡下で、付着上皮直下結合組織と歯根膜における単位面積(0.1mm x 0.1mm)あたりのIL-1 beta陽性線維芽細胞数とTNF-alpha陽性線維芽細胞数を数えた。その結果、どちらの陽性細胞密度も、高コレステロール食を与えた方が標準食の場合よりも高いことが分かった。このことは、高コレステロールの摂取による炎症性サイトカインの産生の増加が、歯周病をさらに悪化させる一因であること示唆している。続いて、歯周病の関連項目として、歯周組織における酸化ストレスの発現を検討した。指標として8-ヒドロキシデオキシグアノシン(OHdG)を用い、免疫染色による検出を試みた。抗体を50倍、100倍、200倍、400倍および1000倍に希釈して染色性を比較し、最も良好な結果が得られた200倍の希釈濃度で染色を行うことにした。また、ネガティブ染色を行い、抗体の特異性も確認した。そして炎症性サイトカインと同様の方法で評価したところ、高コレスレロールの摂取によって8-OHdG陽性線維芽細胞が増加することが明らかになった。近年の研究から、高コレステロールの摂取は血液を介して末梢組織に大量の酸化物質が供給される原因になることが報告されている。さらに、組織に対する過度の酸化物質の供給は、酸化ストレスを高めて炎症の増悪を促すことも知られている。以上のことを考慮し、平成18年度は血液中の酸化物質の濃度測定を含めて、なぜ高コレステロールの摂取で炎症性サイトカインの産生が高まるのかを解明する予定である。
すべて 2005
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Journal of Dental Research 84
ページ: 752-756
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ページ: 49-53