近年、Peptostreptococcus microsは歯周病関連細菌として注目を集めている。予備実験において、同菌がヒト歯肉線維芽細胞(HGF)に作用してサイトカインを産生することから、細菌性モデュリンの存在が示唆された。P.micros菌体には、プロテアーゼ活性を有することが知られているため、各種プロテアーゼ阻害剤を用いて調べた結果、P.micros菌体によるIL-6、IL-8の誘導をTLCK、Leupeptin、Pepstainは強く阻害した。また、菌体の加熱処理によりIL-6、IL-8の誘導は減弱した。これらの結果から、細菌性モデュリンとしてP.microsの有する酵素が関与していると考えられた。 一方、我々は、歯周病関連細菌由来GroELがHGFやヒト歯肉上皮細胞に作用してIL-6やIL-8を誘導するなど、モデュリンとしての生物活性を有することを報告している。唾液を検体として歯周病原細菌由来GroELに対する唾液IgA抗体の反応性をWestern immunoblottingにより調べた結果、Campylobacter rectus GroELおよびPorphyromonas gingivalis GroELは健常人と比較して、歯周病患者の唾液IgA抗体と有意に強く反応した。更に抗C.rectus GroEL IgA抗体を有する者の唾液から分泌型IgAを精製し、C.rectus GroELのHGFからのIL-6産生誘導能に対する影響を調べた。その結果、精製した分泌型IgAはIL-6の産生を抑制した。以上の結果から歯周病患者の唾液中に認められる抗GroEL IgA抗体は細菌性モデュリン(GroEL)に対する生体防御因子としての役割が示唆された。
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