本年度は、昨年度に経過途中となっていたGranulicatella adiacensのFn表層物質の精製を継続して行った。アフィニティークロマトグラフィーで得られたタンパクをSDS-PAGEにて展開したところ、いくつかの主要な分子が検出された。そのうち、約80kDaと約100kDaの2つの分子はG.adiacensの超音波破砕上清中の主要な分子と一致した。同時にStreptocpccus pyogenesで同定されているFn結合タンパクの塩基配列を基に、G.adiacensのFn結合物質の同定を試みた。S.pyogenesのFn結合タンパクの一つであるPrtF1を鋳型として、PCRを行ったところ、prtF1-like geneとして、605 bpのPCR産物が得られた。ホモロジー検索の結果、streptococcus gordoniiのFn結合タンパクの一つであるCshA C末端のFn結合領域であるくり返し領域と高いホモロジーが得られた。この繰り返し領域について、発現プラスミドを作製した。得られたリコンビナントタンパクをG.adiacens5とともに反応させると、G.adiacensのFnに対する付着を30〜40%抑制した。以上のことから、本繰り返し配列は、Fn結合能を有し、Fn結合タンパクの一部であることが示唆された。しかし、付着抑制が十分でないことから、この繰り返し領域以外にも付着に関与する領域が存在することが予測され、上記の分子のいずれかが、本研究で同定された、くり返し配列を含むFn結合物質と考えられる。さらに、別のFn結合物質の存在も示唆され、これらの活性が検出されている可能性がある。今後これらを同定し、Fnへの結合能の解析を行う予定である。
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