本研究の目的は口腔ケア・口腔衛生状態が胃粘膜萎縮に与える影響を検討することである。まず平成17年にはその基礎的研究として北九州市在住の市立年長者研修大学校に在籍する高齢者のうち、本研究に対しご同意をいただいた231名(男性116名、女性115名)に対し、(1)口腔および全身に関する問診(2)口腔検診(3)血液検査(白血球数、赤血球数、ヘモグロビン値、血小板数、総蛋白、アルブミン、GOT、GPT、γ-GTP、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、総コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪、過酸化脂質、血糖、HbA1c、インスリン、CRP、血清抗H.pylori IgG抗体、ペプシノーゲンI/II比)(4)内科検診を行った。この基礎的研究は事前に九州歯科大学倫理委員会の承認を得て開始し、研究開始の事前に個々の対象者から書面でインフォームドコンセントを受けた。結果としてブラッシングの回数が多いほどH.pylori感染率が低いが、口腔ケアや口腔衛生状態は胃粘膜萎縮の進行に影響を与えないことが示された。 また平成18年以降は当院にて上部消化管内視鏡を施行した症例のうち、本研究にご同意をいただいた者に対し(1)口腔および全身に関する問診(2)血液検査(白血球数、赤血球数、ヘモグロビン値、血小板数、総蛋白、アルブミン、総コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪、CRP、フィブリノーゲン、血清抗H.pylori IgG抗体、ペプシノーゲンI/II比)(3)尿素呼気試験(4)口腔検診(喪失歯数、プラークの有無、歯周ポケットの有無と深さ、歯の汚れ、齲歯の有無)(5)上部消化管内視鏡検査を施行し、口腔ケア・口腔衛生が胃粘膜萎縮に与える影響を検討していく予定である。
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