歯周病細菌Pprphyromonas gingivaisは菌株間において、歯周病の病原性に違いがあることは以前から報告されているが、その病原性を決定づける遺伝子群の同定および解析は行われていない。各菌株間における特異領域を解析することにより、その菌株の病原性に関与する遺伝子を決定することは歯周病の病態を明らかにする上できわめて重要である。本研究では、P.gingivalisの病原性の強い菌株であるW83株と病原性があまり高くない菌株であるATCC 33277株の染色体DNA上の遺伝子領域の違いを調べ、W83株に特異的な領域を調べた。 菌株間の染色体DNA上の遺伝子領域の差異については、subtractive hybridization法を用いて解析した。本法を用いて、P.gingivalis W83株に特異的な領域が32箇所同定された。同定された特異領域の中でも、莢膜様多糖合成に関与する遺伝子、リボヌクレオシドトリフォスフェートリダクターゼ、ヒスチジンキナーゼ等の遺伝子群についての変異株を作製した。変異株の確認は、それぞれの遺伝子についてのDNAプローブを用いて、サザンプロット法を用いて行った。これらの遺伝子が確実に挿入失活されたことを確認したのち、それらの病原性への関与について解析を行った。病原性の関与についてはBALB/cマウスの背部にW83株とその変異株を接種し、腹部に形成する潰瘍の大きさを比較することにより解析している。また、潰瘍部の組織像を比較検討し、P.gingivalis W83株に特異的な遺伝子群の病原性への関与を解析している。
|