研究概要 |
1.地域高齢者の温泉の利用状況と主観的・客観的健康状態の関係-特に脳血管疾患,骨関節系疾患のリスク因子について-の調査の実施 A県内の日帰り温泉施設(1箇所)の利用者170名を対象に温泉の利用状況,自覚症状と通院の有無,身体測定(BMI,血圧,脈拍,SpO_2,膝の関節可動域,骨密度,握力),生活習慣(食事,運動,睡眠,喫煙,飲酒),主観的健康観(SF-8)について聞き取り調査ならびに測定を行った。利用者は75歳以上が多く(43.5%),女性が64.7%であった。51.8%は週に1回以上の利用であった。健康状態はよい,まあよいが71.1%であった。健康に対する悩みがある者は46.5%で,気になる自覚症状は肩こり,背中や腰の痛みが上位であった。62.9%は病院に通院中で,高血圧,骨関節系疾患,高脂血症が多かった。利用目的は,男性はたっぷりの湯につかりたい,筋肉をほぐしたいが多く,女性は友人との交流の場が多かった。週1回以上の利用を高頻度利用群(以下高群),月1〜2回,年に数回を低頻度利用群(以下低群)とした。収縮期血圧は高群で有意に高かった(p<0.05)。骨関節系疾患の割合は高群で有意に高かった(p<0.05)。風邪をひきやすいは高群で有意になしの割合が高く(p<0.05),脂肪分の多い食事を好んで食べない,運動を心がけている,十分に休養がとれている割合は高群で有意に高かった(p<0.05)。SF-8の下位項目に有意差はなかった。温泉を利用する高齢者の多くは概ね健康状態はよいと考えられるが,高血圧,骨関節系疾患の罹患が高いことが分かった。温泉を健康づくりに活用する人は少なく,保養目的での利用が多かった。調査結果はプログラムの対象者や目的,内容の検討に活かしていく。 2.全国市区町村の日帰り温泉保有状況と保健事業や高齢者福祉事業への活用についての調査 実施市区町村役場健康福祉部(課)1821箇所に調査用紙を郵送し,1302箇所から回答を得た(回答率71.5%)。日帰り温泉施設の保有割合は48.4%であり,文献で言われる7割より少なかった。温泉施設を保有する市区町村のうち,温泉を保健事業や福祉事業に活用しているのは47.5%であった。内容は健康相談,健康教室,運動やストレッチの指導が多かった。これら保健福祉事業のアウトカム評価は今回の調査結果からは不明であり,それら評価と現状での問題点を明らかにする必要がある。
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