本年度は継続研究(3年間)の初年度であり、HIV陽性者への訪問看護に関する実態把握を主眼とした。具体的な活動としては、HIV陽性者への訪問看護を既に実施している全国の訪問看護ステーションの看護師5名に対して、研究の目的や情報の守秘、研究への協力は自由意思であることなどを説明し、同意を得た上で半構成的な面接調査を行った。調査内容は、HIV陽性者への訪問看護を開始するにあたっての問題点や課題などである。調査内容を質的に分析し、さらに面接対象者にこの結果を確認して妥当性を検証した。その結果、HV陽性者への訪問看護を開始するには、医療者側のHIV/AIDSに関する知識の有無や偏見などの「医療者の特性」、拠点病院とのネットワークや緊急時の対応などの「在宅支援のネットワーク」、HIV陽性者のケア内容や家族の介護力などの「対象者の特性」、守秘義務や個人情報管理に関する「プライバシー保護」、感染予防対策などの「二次感染予防」、上司やスタッフの受け入れなどの「組織/スタッフの受け入れ」という6つの要因が影響していることが明らかとなった。抽出されたこれらの要因を元に、現在、全国の訪問看護ステーションに対してHIV陽性者への訪問看護を開始する上での問題や課題について、実態を把握するための調査票を作成している。 また、全国の訪問看護ステーションでのHIV陽性者への訪問看護経験の有無を把握するための調査を行い、現在はその返信を待っている段階である。 以上の結果を次年度の研究に活用していく予定である。
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