まず、平成18年度に行った調査を分析した。その結果、全国的なHIV陽性者(以下、陽性者とする)への訪問看護実施率が2.5%であり、受け入れていない訪問看護ステーション(以下、施設とする)における依頼率も3.2%であることが明らかとなった。地域では関東・甲信越地方が多かった。これらのことから、陽性者の訪問看護は都市部の一部でしか進んでいないことが推測された。しかし、真のニーズがどれだけあるかについては病院側からの調査を必要とすると考える。また、陽性者への訪問看護経験のある施設においても、個人情報保護の点からケアに関する情報交換の場がないことやケアスキルの蓄積もままならないことから、試行錯誤の状態でケアを行っている現状が明らかとなった。このことは、ケアの質の向上にとっては課題といえ、個人情報は保護しながらケアに関する情報交換のできる情報ネットワーク構築の必要性が示唆された。さらに、受け入れを推進するための要件として、訪問看護部門以外も含めた組織的受け入れが重要であり、その基盤として全職員に対するHIV/AIDSに関する知識の普及が必要であると考えられた。 次に、上記の分析結果ならびに平成17年度の調査結果から、陽性者への訪問看護の初回依頼時に受け入れを進めるプロセスを図式化した手順書(案)を作成した。この手順書(案)の信頼性を高めるため、平成18年度の調査対象であった陽性者への訪問看護経験を持つ20施設に内容の妥当性について意見を求めた。得られた意見を集約し、最終的に「HIV陽性者への訪問看護依頼時の受け入れ準備手順」を完成させた。
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