研究概要 |
【目的】臥位姿勢のまま生体機能を向上させる運動としての腹臥位の生体への影響、なかでも自律神経活動およびエネルギー代謝への影響を療養姿勢として用いられる仰臥位と比較し検討する。【研究方法】18〜29歳までの健常女性20名を対象とした。安静仰臥位20分保持後に仰臥位20分保持(対照)、腹臥位20分保持(介入)の2種類の介入を実施日にちを変えて実施した。評価指標は、(1)心電図モニターによる心拍変動解析(PowerLab4/25, MLバイオアンプ,ADInstruments社)、(2)血圧、(3)酸素摂取量による予測消費エネルギー量(METAVINE-N VINE社)、(4)主観感覚についての自記式質問紙調査とした。(1)は介入1分後、介入15分後よりそれぞれ5分間のデータを、(2)は介入15分後、(3)は介入15分後より3分間のデータを採取した。実験終了後(4)を記入してもらった。分析方法は、総計処理ソフトSPSSを用い、介入の種類での比較、および時間経過に伴う変化を検討した。【結果】心拍数は、仰臥位保持では安静以後減少したが、腹臥位では介入1分後に一度上昇したのち減少した。交感神経活動を示すLF/HFは、仰臥位では介入後徐々に上昇する傾向があったが、腹臥位では、介入直後に減少したのち上昇する傾向があった。副交感神経活動を示すHF(nu)は、仰臥位、腹臥位ともに安静時より変化はみられなかった。予測消費エネルギー量は、仰臥位では安静時より減少したが、腹臥位では安静時に比べ有意に増加した。【考察】腹臥位時では仰臥位時に比べて交感神経活動はやや低下し、副交感神経活動には大きな変化はなかった。一方、エネルギー代謝は腹臥位時に有意に増加した。健常な若年者に対する腹臥位姿勢の保持は自律神経活動や循環動態に影響を与えるほどの刺激にはならず、また腹式呼吸を促すことで効果的な代謝活動が誘発されると推察された。
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