本研究は、看護基礎教育終了後、社会人経験等なく、はじめて看護師として病院施設に勤務した新卒看護師2名の協力を得て実施した。本年度は、平成17年度11月〜平成18年度3月末日までの5ヶ月間、およそ4日/月の割合で新卒看護師の看護実践場面の参与観察と、その場面に関連した非構成的インタビューをおこない、新卒看護師の看護実践プロセスにおける思考様式と、それがどのように変容していくのかを質的記述的に分析した。その結果、新卒看護師は、臨床において直面する問題状況の中で、看護学生だった頃の臨床看護実習での経験「自己の看護実習経験の物語」と先輩看護師の日々の臨床での経験の語り「古参者の看護ケア経験の物語」を、自らの看護実践の文脈の中で主体能動的に活用しつつ実践していた。さらに、新卒看護師自らが日々の臨床における看護実践を通して経験する出来事「自己の看護ケア経験の物語」が加わっていくことによって、思考の深まりや多義的な看護実践の展開がみられていた。また、その場その場の患者の状況に対して、ひたむきに向き合おうとする、新卒看護師の「応答性」を中心とした関わりは、新卒看護師自身が一人の看護師として患者から信頼される経験につながっていた。さらに、そのような患者への看護援助や関わりについての「自己の看護ケア経験の物語」が、参加している共同体(所属する病棟)の看護メンバーから「良き実践」として承認され、看護実践に活用される「良き実践として他者の看護実践に借用される経験」は、自己の看護に対する自信や、共同体の看護メンバーに対する信頼感につながり、新卒看護師がさまざまな問題状況に対して、行動しつつ考えることを促進させていた。 次年度も研究継続させて、就職直後〜半年間の新卒看護師の看護実践プロセスにおける思考様式を理解するとともに、その形成過程における看護実践能力の変化を明らかしていくことを予定している。
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