研究概要 |
1.文献検討 1980年以降に開発された、組織文化を定量的に測定するツールは12件あった。しかし、国内でその信頼性と妥当性を検証されたものではなかった。従って、日本において、医療組織の組織文化を定量的に測定するにあたり、その規範の検討が必要であった。過去に開発された定量的測定ツールで採択されている組織員行動の規範を全で網羅した質問紙を作成する必要があった。 2.組織文化に関する質問紙の開発 過去に開発された組織文化の測定ツール、(1)OCI(Organizational Culture I),(2)OCP(Organizational Culture Profile),(3)Hofstedeの組織文化,(5)CVM(ComPeting Value Model)で採用されている規範を全て取り入れ、76項目となった。それぞれの規範に適切な設問を検討し、学識者.臨床家よりスパーバイスを受け、「組織文化に関する質問紙vol.1」を作成し、パイロットテストを実施した。 3.「組織文化に関する質問紙vol.1」予備調査の結果 文献検討より作成した「組織文化に関する質問紙vol.1」を用いて、病院組織で予備調査を実施した。配布は組織に属する全職員795名、回収は554名で回収率は67.9%であった。度数分布の尖度を確認したが,質問紙から排除すべき項目は見あたらなかった。因子分析により、5つの因子が排出された。1点目は、「正確性」「詳細への注意」「注意深さ」「ルール志向」「個人の責任重視」などの規範で構成され、病院組織がいかに「正確」であることが重要なカルチャーを有しているのかが明らかとなった。2点目は、「毅然性」「自己実現」[行動志向」[個性重視」という規範で構成され、個人が尊重される組織の特性が現れた。3点目は、「低い葛藤」「公平性」「ヒト中心」「個人の権利の尊重」「葛藤の回避」という規範で構成され、コンフリクトを低くする特性が見られた。4点目は、「上司志向」「地位による権限」「従属的」「仕事志向」という規範で構成され、組織としての機能が十分に備わっていることが見出された。5点目は、「仕事上の有効性の構成」という規範で、友好的に仕事をするという特性が見られた。 4.今後の研究の方向性 医療組織における組織文化を測定するためのツールとその感度が確認されたので、今後は、本ツールを用いて、複数の医療組織でデータを回収することにより、医療組織に特化した文化であるのか、その組織特有の又化であるのか、という視点で質問紙を精緻化していく方針である。
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