研究概要 |
平成18年度に開発した「医療組織における組織文化の測定ツール」を用いて,設置主体の異なる2施設において質問紙調査を実施した。施設Aは法人病院でN数514,施設Bは日本赤十字社系列の病院でN数451であった。 それぞれの施設ごとに因子分析をおこなったところ,施設Aでは4因子,施設Bでは3因子を抽出することができた。施設Aにおける第1因子は「自己実現のために熱心に働き変化する」文化,第2因子は「公正・公平性」の文化,第3因子は「正確性」の文化,第4因子は「権限重視」の文化であった。施設Bにおける第1因子は「個人の尊重と行動重視」の文化,第2因子は「正確性」の文化,第3因子は「権限重視」の文化が抽出された。 医療を提供する組織ということからも「正確性」という文化は共通して重要であると考えられる。また,両方の施設において「権限」が働き組織だっていることがわかった。第1因子については,それぞれの管理者から,組織の特徴をよく表しているという感想を得た。両方の施設において,管理者はその第1因子の組織文化を肯定的に評価していた。これらの第1因子こそが各組織の特徴であり,アウトカムを導き出していると語られた。 しかし,因子分析の意味することは,「組織構成員の多くがそのような価値観を持っている」ということではなく,「その因子が組織員を分類するにあたっての物差しとなる」ということからすると,そう思っている人と,そう思っていない人が共存していることになる。その事の意味を今後思考する必要がある。 次年度の研究では,それらの組織文化がどのような歴史を経て創造されたものなのかを探究したいと考えている。
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