本研究課題は、ベッドからの転落事故防止策を確立するために、睡眠中の体動を検知するセンサーを用いて睡眠深度を推定する睡眠評価システムを開発することである。市販されている転落防止用センサーでは、睡眠深度を推定できる予備動作は感知できるとはいえない。また、信頼できる睡眠評価システムを臨床に導入するためには高価であるという状況である。そこで、比較的安価でかつ信頼性のあるシステムを開発する必要性がある。 本年度は、体動によって生じる振動を継続的に測定するシステムの構築を目指した。従来の圧電素子や空気圧を利用したセンサーの場合、ノイズを除去したり、サンプリング回数を増やしたりする必要がある。市販されている振動計では、ベッド全体の振動を感知してしまうだけでなく、ベッド以外の寝床ではモニタリングできないということが明らかとなった。そこで、ひずみゲージを使った体動検出器の開発を試みた。試作した体動検知装置をマットレスもしくは布団の下で、臥床者の腰の位置に設置し、体動によって生じるひずみの値を継続的に観察したところ、臥床者に負担かけることなく、寝返りや起き上がりの動作を感知することができた。また、体動検知装置による終夜モニタリングによって睡眠中の体動状況を記録することができた。現在、睡眠中の体動状況を腕時計式活動記録器(アクチウォッチ)で記録し、体動検知装置で得られたデータと比較を試みているところである。 より正確に体動を検知するために、検知装置の基本構造に更なる改良を加えている。さらに、サンプリング回数やデータ解析法を検討している。また、実際の覚醒状況との関連について更に検討を進めるためにアクチウォッチと構築した体動モニタリングシステムのデータとの両方を収集している。今後、実際に夜間など転倒転落の恐れのあるケースを対象とした臨床研究も同時に行っていく予定である。
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