研究概要 |
本研究においては、倫理的判断を必要とする場面を、新生児の、親による治療拒否場面と設定して、研究を進めた。調査内容の詳細を決定するために文献・資料の調査を行ったところ、治療拒否場面とされるものは、状況として治療が中断した場合と不開始であった場合、結果として治療が行われなかった場合と行われた場合、それを親が選択したとする場合と親が拒否したとする場合に分かれるなど、「治療拒否」という概念が定まっていないことが懸念された。また、「治療拒否」のように動詞に「拒否」がつく言葉は、「拒否」前の動作について「したほうがよい」あるいは「しなければならない」という意図が暗黙のうちに含まれているのではないかということが浮かび上がった。このため、「治療拒否」の概念分析を行う必要があることが明らかになった。 「治療拒否」についての概念分析は、子の治療を拒否する場合に範囲を広げ小児分野まで調査した。この結果、エホバの証人輸血事件に見るように、成人において治療選択の一であると考えられる治療を拒否することは、子の治療に対しては医療従事者側から介入が必要である状況であると捉えられていることが考えられた。また、この過程で「医療ネグレクト」の概念分析を行う必要があることも明らかになった。この結果は、「障害・医療・社会について考える会第3回公開セミナー」にて発表した。この際に、子の親の立場にいる方からの意見を聞くことができ、今後の調査計画の修正に重要な示唆を得ることができた。また、海外の文献にっいては、neonatal, refusalよりもneonatal, withdrawあるいはneonatal, withholdingとして検索を行ったほうが適当であると思われ、medical neglectも含めても検索、分析を進めている。
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