研究概要 |
本研究の目的は,国際救援要員として派遣予定,および派遣された経験のある看護者を対象に,(1)派遣前,派遣中,派遣後において,異文化に適応する過程でどのような心理的,情緒的,身体的な問題に直面するか,またその対処についての現状を明らかにし,(2)国内外の文献検討から異文化適応と日本文化への再適応について検討する。さらに(3)心理的サポートシステムの試案を開発することにある。本年度の調査から以下について明らかとなった。 1.日本の救急医療チームとして被災地に派遣される場合,派遣前には被災地の状況,文化への懸念というよりもむしろ日本人同士の人間関係、チームメンバーとして機能するかどうかについて気がかりを持っていた。派遣中には,メンバーが順番に身体的な問題を引き起こすこと,情緒的・心理的な問題については、感情を「対自己」として表出し,「限られた期間」の活動として,それぞれがチームワーク機能を最優先し生産性を高めるために、お互いが気配りをしていた。派遣後の調整者との「ディブリーフィング・報告会」が、活動報告としての機能だけでなく,派遣者にとって実践内容の統合,感情表出、日本への再適応の切り替えとして心理的にも最も意義のあることが明らかとなった。 2.看護者が医療チームの中で,被災者の救援活動に当たる際,自らも被災者と同様の悲惨な状況,不自由さと混乱の中にある。国際救援活動の経験者は、十分にケアをできずに亡くなった対象者を思い出すといった看護実践の振り返りをすることに対し,国際救援活動の経験が少ない者は,自己の感情を見つめ向き合うというよりも任務の遂行に関心が置かれていた。
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