本研究の目的は、感覚(視覚、聴覚、嗅覚)を刺激してリラックスするための環境を整えた中で呼吸法を用いることが、ベッド上で過ごすことが多い入院患者のリラックス反応を導き出すという効果を検証することである。 対象はA病院放射線科に入院中の患者12名とした。対照群、実験群ともに、ベッド上で臥位のまま呼吸法を実施した。実施する呼吸法は、呼気を吸気の2倍の長さで行う腹式呼吸とした。対照群に対しては、研究者による呼吸法を実施するための声かけのみを行った。実験群に対しては、以下の環境を調整した中での呼吸法の実施とした。視覚を刺激する方法としては森林の映像、聴覚を刺激する方法は、映像にあわせた川のせせらぎ音や鳥の声とし、市販のDVDの音楽の含まれていない部分を使用した。また、嗅覚を刺激する方法として、αピネンが多く含まれたひのき精油をディフューザーを用いて拡散させた。評価指標は、心拍変動解析によるHF、LF/HF、心拍数、唾液中のコルチゾール濃度、POMS日本語版とした。 すべての指標において、両群ともに同様の変化を示し、群間比較による有意差は認められなかった。両群ともに実施した呼吸法によってリラックス反応が引き起こされたと考えられる。実験群の対象者から「森林の中で寝そべっているようで気持ちよかった」、「ほのかな香りが心地よかった」などの反応もあり、環境を調整したことによる影響があった。対象者数が少ないため、継続してデータを蓄積し療養環境において環境を整えることの重要性を明らかにしたい。
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