本研究は、胃癌に対する幽門側胃切除術をうける患者の残胃機能、とくに胃排出能の指標となる残胃内容積を客観的に数量化し消化器愁訴およびQOLとの関係を明らかにすることを目的としている。今年度は、胃排出能の測定方法を検証し健康な成人と術前の胃癌患者の胃排出能を明らかにした。また、幽門側胃切除術後の胃癌患者の胃排出能と消化器愁訴およびQOLとの関係性を検討した。 健康な成人において腹部超音波法とアセトアミノフェン法の相関性を検討した結果、腹部超音波法により求められた胃排出能とアセトアミノフェン濃度相互間には有意な相関関係は認められなかった。結果より、本研究では胃排出能測定法として一般化されているアセトアミノフェン法を用いて調査を遂行することにした。 胃癌患者は健康な成人と比較して胃排出能が遅延しており、また胃排出能が遅延している胃癌患者は術前の包括的QOLが低かった。 幽門側胃切除術後の胃癌患者の胃排出能と消化器愁訴およびQOLとの関係性を検討した結果、胃排出能と消化器愁訴およびQOL相互間には有意な相関関係は認められなかった。しかし、胃排出能が亢進していると食事を摂取することに支障が生じている傾向にあった。胃排出能を経時的に示した時、全ての時点において体重やBMIと有意な相関が認められ、幽門側胃切除術後の胃癌患者の胃排出能と体重などの栄養状態は何らかの関係があると考えられた。この結果は8名の結果であり、複数の被験者の測定が必要である。 次年度も同様の調査を継続し、データを蓄積することで結果の信頼性を高め、残胃内容積と消化器愁訴およびQOLとの関係性を検討したいと考える。
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