今年度は、(1)量的調査による家族システムの学習モデルの要素抽出、(2)質的調査による家族システムの学習モデルの要素抽出、(3)海外研究者との意見交換を目的として実施したが、実施順序として(2)→(3)→(1)の順序で進めた。まず(2)によって学習者のプロセス、個人的体験を総合的に分析した結果、演劇制作によって十分な学習効果が得られるのは、ジェノグラム・エコマップとカルガリー式家族アセスメントモデルを使用した項目ごとのアセスメント能力であった。とくに、機能面のアセスメントでは、表出的なコミュニケーションのパターンを円環パターンとして捉えることにより、家族システムと病の苦悩の相互作用を理解することができるようになっていた。一方で、「ビリーフ」の理解には個人差があり、制作した演劇を振り返り、苦悩の根源となる「コア・ビリーフ」を推測する能力の学習には十分ではなかった。そこで、制作した家族を対象に、相談面接の場面を想定した模擬面接を行い、技術水準の異なる面接者による面接を実施、それを振り返ることによる学習効果を調べた。しかし、面接における状況を認知・概念化する技術レベルの水準によって、理解の度合いが相当に異なることが明らかになり、家族システム看護の技術習得、とくにビリーフを中心とする理解には認知・概念化する技術に依存する段階があることが示唆された。一方で、研究協力した学習者のほぼ全てが自分の臨床看護がより良い方向に変化していると分析していた。この成果を、家族システム看護研究の第一人者であるライト博士、ベル博士と議論した結果、それぞれの段階における技術がどのように臨床で活用されるのか、段階に応じた知識の臨床移行を調べることによって、段階ごとの臨床技術確立を探求する意義を確認した。したがって最後の(3)の量的調査の分析は、現在進行中であるが、(1)(2)の2つの成果を分析に生かす方向で継続する。
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