精神科における隔離及び身体拘束について、看護師が判断を求められる状況の実態を明らかにし、行動制限最小化に貢献する看護技術のあり方について検討することを目的に本研究を行っている。本年度は、精神科病院9施設の保護室を有する病棟の看護管理者13人を対象に半構造的面接を行った。 看護師に判断を求められる状況は、以下の6つに整理された。(1)「一時的中断の判断」は、患者の生活上の配慮を目的として、隔離室からの退入室、または拘束の中断と再拘束を判断するものである。患者の病状やリスク、隔離室からの退室範囲、マンパワーに応じ、医師と看護師で検討したり、看護チームで検討したりしながら判断を行っている現状が語られた。(2)「開放観察指示下の判断」では、医師の指示による開放時間の範囲内で、看護師が病状や他者との関係性を観察しながら隔離室からの退入室、または拘束の中断と再拘束を判断している実態が明らかになった。また、開放観察中は、看護師による密度の濃い観察と状態の変化への対応・介入が必要とされるために、開放観察時間を決定する医師の判断過程に看護師は強く関与することが語られた。(3)「危険回避のための行動制限の判断」については、当事者同士の物理的距離を遠ざける介入やマンパワーを速やかに集約する対処が行われることで、現場スタッフの判断による行動制限の必要性はほとんど認識されていなかった。(4)「身体的治療・事故防止のための拘束の判断」については、身体的治療(点滴、鼻腔栄養)や事故防止(転倒・転落防止、ルート抜去防止)目的の拘束について医師もしくは看護者も判断している実態が語られたが、看護の工夫により拘束を減少できる可能性がある。(5)「拘束部位の調節の判断」については、マグネット式拘束帯の部位の増減をコントロールする判断を看護師も行っていることが明らかになった。(6)「任意希望による隔離の判断」については、自傷・自殺のリスクもあることから、医師の診察による判断を必要としている傾向にあった。来年度は、本年度の質的データの分析結果から質問紙を作成し、全国的な傾向を探る予定である。
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