放射線治療を受ける頭頸部がん患者における味覚変化・口内反応と患者の食思傾向を低下させないあるいはこれを高める食物特性および嗜好性との関連性を明らかにするため、Coγ線で外部照射中あるいは終了後7日以内の頭頸部がん患者13名に面接調査を実施した。その結果、放射線治療を受ける患者の食思傾向に影響を与える食物特性は、【テクスチャー[食感]】【味付け】【嗜好性】【匂い】【食形態】【温度】の6要因であり、40-50Gyを境としてこれらの食物特性に大きな変化が認められた。30-40Gyにおいて患者が影響を受ける食思傾向の要因は【テクスチャー】【味付け】【嗜好性】【温度】【匂い】であった。テクスチャーは食材の本来持つ柔らかさ・硬さを活かした食感、味付けは従来の味付けに比べ濃い味、嗜好性は嗜好度が高くかつ過去の摂取頻度が多いもの、温度は熱いものは熱く冷たいものは冷たくといった至適温度、そして匂いの強さが味覚を感じやすく食思傾向も高める要因であった。50Gy-治療終了7日において対象が影響を受ける食思傾向の要因は【テクスチャー】【食形態】【温度】であった。テクスチャーは柔らかいものではあるがペースト状ではなく歯応えのある食感、食形態は刻み食といった形態が食思傾向に影響を与えていた。温度は高温が疼痛を増強させるため、患者は人肌程度に冷まして摂取していたが、これが逆に食思傾向を低下させる要因でもあった。このことから疼痛を感じない範囲内での温度調整が良い食思傾向に影響を与えていた。また60Gy-治療終了7日では【匂い】が食思傾向と高い関連性があり、特有の匂いの強さが食思傾向を低下させた。なお味覚変化・疼痛・口腔内乾燥と食思傾向に影響を与える6要因との関連性は、日内変動から影響を受けることも明らかとなった。この結果を踏まえて現在、質問紙を用いて、その放射線量、食物特性および嗜好性との関連性についてより詳細な調査を続けている。
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