網膜芽細胞腫は、遺伝性の場合にも、遺伝性でない場合にも親はなぜ子供がそのような病気になってしまったのか苦悩し自分を責めてしまうことがある。しかしながら、生後まもなく発症するため、直ちに親は治療の選択をせまられ、自分たちの苦悩に対して適切なケアを受けていないのが現状である。そこで、本研究は、網膜芽細胞腫を発症した児をもつ親のニーズを明らかにし、そのニーズに対してサポートプログラムを開発することを目的とした。本年度は、1)前年度に引き続き、網膜芽細胞腫を発症した児をもつ親へのインタビューを行った。2)網膜芽細胞腫の親の会「すくすく」に参加した。 患児をもつ親からは、今後の治療方針、病気について児にいつ・どのように知らせるべきか、就学以降の友達との付き合いで苦労すること、長期的な予後や二次障害の出現頻度、など身体的・心理的・社会的側面に関する懸念が聞かれた。その一方で、現在は患児をもつ親が集っているが、将来は患児同士が集いサポートグループを形成してほしい、という親の願いが聞かれた。 網膜芽細胞腫の親の会「すくすく」では、毎月の定例会に加えて、年に1回、全国から会員が集まり、勉強会ならびに情報交換会を開催している。ここで、実際に親に会い、現在の心配事や不安なことを聞き、インタビューから得られた親の懸念や希望の内容を活用し、看護の視点でアドバイスを行った。このように、蓄積されたインタビューデータをもとに発症した児をもつ親への情報提供ならびにアドバイスは、サポートプログラムの一部分として有効なものであると考えた。しかしながら、会員の多くは遺伝性ではないため、会に参加している遺伝性の症例(すなわち、親自身が網膜芽細胞腫を発症している)へのサポートを個別に模索していく必要性も示唆された。今後、引き続き研究及びサポートを通して、サポートプログラムの充実化を図る予定である。
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