本年度は、平成13〜16年度に引き続き、不妊治療後の多胎妊婦が安心して出産・育児するための看護プログラムの開発とその評価に関する研究を行った。前年度までに、妊婦の不安を軽減するための看護プログラムとして視聴覚教材の開発を行い、本年度は、その評価の前段階としてプレテストを実施した。プレテストの結果、当事者である多胎妊婦からは視聴覚教材を見ることで、新生児や産後の生活・育児をイメージでき、安心できたとの声が多く聞かれた。一方、視聴覚教材の内容に、地域色が多々認められたため(使用した教材は九州および東北地方の多胎グループが作成・公開の許可が下りている。このような教材を作っているのは全国でもこの2件以外は未だ確認できない)、今回、研究対象の妊婦ら(東京都心近郊に居住)からは、自分たちの住む所に見合った視聴覚教材があるとより良いとの声が聞かれた。以上のことから、再度、教材の内容を見直し、より対象となる妊婦のニーズに沿ったものにしてゆくことの必要性が示唆された。 さらに、研究施設である都内の臨床現場からは、不妊治療後に多胎を出産した母親が退院後の育児に多くの身体的・心理的な負担を抱えている現状が報告された。よって、それを受けて、次年度の計画としていた産後の母親と多胎児へのフォローをどのように行うかを急遽、検討することになった。現在、退院後の母親と家族の現状を把握すること、また他の病院・施設でどのような退院後のフォローを行っているかについて情報収集を行っている。これらの結果を受けて、研究対象となる母親らのフォローを今後どのように行うかを、研究施設の現場スタッフとともに話し合い、次年度以降に計画している看護プログラムの一つである「個別相談窓口」の開設につなげてゆきたいと考えている。
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