研究概要 |
1、事例調査:ひとりの保健師が一定期間に援助した全ての事例について、事例概要と保健師が行った対応を、記録物と保健師からの聴き取りにより調べた。調査対象は、面積約500km^2人口約7万人の中山間地域を管轄する保健所の精神保健業務担当保健師が、調査時点からさかのぼって8ヶ月間に担当として対応した17事例である。分析の結果、以下の知見を得た。 ・保健師に援助を求めた内容には、社会資源の利用や家族間・住民間の人間関係の持ち方など、地域・家庭で生活していく上での問題対処方策の模索という性質が確認された。 ・保健師の援助の成果には、相談者自身や本人・家族など当事者の自己決定による問題対処、社会資源活用の能力を向上し、その結果として心身の健康状態への影響を導く構造があると考えられた ・援助提供に用いる方法としては、本人・家族のみでなく支える関係者に対する連絡・報告を密にしており、このことが関係者を介した支援提供や新たな対象把握につながると考えられ、保健師のアウトリーチ機能の重要な一面と考えられた。 2、文献調査:欧米等の先進諸国における看護職によるアウトリーチ実践活動関連文献を、health visiting、vulnerability, case management等をkey wordsに収集した。施設や特定のプロジェクトにおかれた看護職のアウトリーチ機能、英国におけるヘルスビジターの現状と課題を整理した。 3、成果まとめ:保健師のアウトリーチ機能の分析枠組みとして、「支援関係者」と当事者・相談者の「自己決定」「問題対処」「資源利用」という重要な概念が浮かび上がってきた。今後は、ライフサイクル・心身の健康問題別に様々な対象を含む同様の調査を行い、対象特性に応じ特徴的な点と共通する点を整理分析する必要がある。また、保健行政部門の保健師のみでなく、福祉や教育、在宅介護支援センターにおける保健師においても同様の調査を行う計画である。
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