本研究の目的は、がんを併発した精神疾患患者のケアを困難にさせている複合要因を、5つの病期にわけて、詳細に分析し、解明することにより、適切な治療と看護を実現するためには何が必要かを明らかにする。また、各病期に沿った時間的な経過と、阻害・促進要因との絡みをフィードバック理論に基づき解明することで、実態に沿った状況の把握と今後起こりうる阻害要因に対する予測をし、それに対する対策をたてることで、困難な臨床状況から望ましい状況に導くための効率的なケアを実践し検証する。 「精神疾患患者の身体合併症(特にがん)ケア」の困難事例について、(1)文献検討、(2)個人インタビュー調査、(3)フォーカスグループインタビュー調査、(4)フィールドワーク、(5)事例検討会を行い、質的・帰納的に分析を行った。 その結果、精神科病院では、がんを併発した精神疾患患者の早期発見の難しさ、激しく拒否をする患者に対する身体的介入(ケアや処置)、インフォームドコンセントなどに、特に困難感を抱いていることが明らかになった。また、「がんの発見・がんの告知・がんの治療・がんの再発の発見を含む治療後の療養期・がんの末期」というがんの5つの病期に応じた精神的・身体的ケアの必要性と阻害要因を予測して回避しつつ、促進要因に導くことを意識した取り組みの必要性が示唆された。今後の課題としては、「がんを併発した精神疾患患者のケア」を含む、「身体合併症治療やケア」のための施設を急速に整備する必要があることが示唆された。
|