対象者は男性71名、女性27名の合計98名であり、平均年齢は43.0歳であった。SECL(精神障害者の地域生活に対する自己効力感尺度)総得点の平均値は68.6点であった。SECL総得点と属性(年齢、性別、同居の有無、入院回数、入院期間、発症年齢、通所の有無)の間に有意な相関は認められなかった。またSECLと一般性自己効力感(GSES)には有意な相関はみられなかったが、自尊感情、QOLには中程度の正の相関がみられた。 SECLで最も得点が高かった下位尺度は「治療に関する行動得点」(20.2点)であり、最も低かった下位尺度は「対人関係得点」(17.2点)であった。最も得点が高かった項目は「約束どおり病院へ通う」(4.6点)、「処方されたくすりをきちんとのむ」(4.4点)であり、低かった項目は「自分から人とつき合ったり、友人をつくる」(3.3点)、「必要なときに公的な援助サービス(役所・保健所など)を利用する」(3.5点)、「くすりの副作用があらわれたとき、自分で気づく」(3.5点)であった。 スタッフの評価による生活技能プロフィール(LSP)とSECL、QOLの間にそれぞれ中程度の正の相関がみられた。SECL下位尺度とLSP下位尺度の間では、11の項目間で有意な正の相関はみられたが、負の相関はみられなかった。よって統合失調症者の主観評価とスタッフによる生活技能の客観評価には大きなずれはみられず、現実検討能力は維持できていると言える。 以上より、統合失調症者の地域生活における自己効力感を高めるためには、自尊感情やQOLの向上に焦点を合わせた介入が必要であることが示唆された。さらに、対人関係や公的な援助サービスの利用等について、自信を持って自らが積極的に行動できるような働きかけを行うことが重要であると考えられる。
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