本研究の目的は、3ヶ年計画の全体を通じて、統合失調症者を抱える家族の対処能力(以下SOCとする)とQOLの特性、社会・文化的背景の違いによるSOCの特徴を明らかにし、家族の健康への力を支えるための看護援助モデルを構築することである。 平成17年度は、統合失調症者と生活を共にしている家族の実態調査、SOCの概念と統合失調症者とその家族のQOLに関する文献検討により、家族自身の健康や生活に対する意識、日常体験する葛藤や困難さを把握することを目的としていた。 文献検討により、SOCと生活出来事との関係・性別による違い、SOCと精神的健康度およびQOLと強い関連があること、また精神疾患患者のSOCが一般人口と比べて低いがそのあり方は多様であることを確認した。さらに、一地方都市における精神障害者家族会(計20名の親、同胞、配偶者)の例会へ定期的に参加した中で、家族の身体面に生じている健康問題、家族と患者との関係や家族と他の親族との関係にまつわる葛藤、日々感じている困難さ、家族自身の生活(特に仕事への影響)を維持することの難しさを語る家族が多数いることがわかった。 平成18年度も引き続き文献レビューを行い、さらに家族の体験を把握するためのインタビュー、SOC29項目スケール日本版とWHOQOL-26を用いた家族の対処能力、健康感について調査する。そして、インタビュー逐語録の内容を質的に分析し、家族がおかれている状況、SOCがいかなるプロセスを経て高められるのかについて検討する予定である。
|