研究概要 |
農作業における身体活動量と農作業中の動作の運動効果について検討した.対象となる農作業は鳥取県で主要な産業である稲作農業とし,農業従事高齢者が主観的に年間最も頻度の多い作業であると感じている「除草作業(草払い器による草刈,草よせ)」の1日の動作を分析対象とした.調査内容は,1日の歩数,1日あたりの総消費エネルギー,運動による消費エネルギーを身体活動量の評価指標とした.また,除草作業中に持久力(endurance),筋力(muscular strength)を高める要素があるかどうかを検証した.測定用具は,KENZライフコーダーEX,ポラール社のハートレートモニター,追坂電子機器Personal-EMGとした. その結果,以下の知見が得られた. 1)農作業従事日の歩数から判断すると,全国,鳥取県の平均値よりも大幅に上回っており,農作業中の移動距離の多さ,作業時間の長さを反映していた.しかし,農作業に従事していない日では,目標歩数に達しなかった. 2)対象者の心拍数は,目標心拍数に達し,長時間の草刈作業は,持久力を鍛錬する効果があった.稲架かけ時には,時折目標心拍数を大幅に越えることもあり,運動の強度としては,負担が大きすぎると考えられた. 3)筋電図データでは,草刈り器を用いた際の大腿四頭筋の活動電位は瞬間的に100%MVCの10〜30%程度であり,草よせ時は,15%程度だった.除草作業が最大筋パワーを鍛えている運動効果になるとは言い難い.しかし,僧帽筋の筋活動量は多く,また,草刈りの動作は振動が加わる脊柱をひねる動作であり,腰痛,肩こり予防のためにも農作業中にストレットや作業後のクーリングダウンを推奨することの重要性が示唆された.
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