ロンドン大学のGray博士らが開発した精神疾患患者のための動機づけ面接を主体とした治療的介入法であるAdherence Therapy(アドビアランス療法)を日本語に翻訳した。また、ワシントン大学のKozuki博士が提唱する服薬アドビアランス向上のための面接法であるVisual feedback法について、その要素を日本語にて要約した。 アドビアランス療法のほとんどは動機付け面接の要素で構成されており、看護師がもつべき背景として「協働的な介入」「治療に対する積極性」「柔軟性」「自尊心の確立」「安全」「中立を守る」があった。さらに、アドピアランス療法において重要視している要素としては「認知的不協和を共有する」「重要性を考察する」「抵抗に対処する(不安の表出などを用いる)」「前向きに、成功した点を強調する」「嫌な治療経験を検討する」「アンビバレンスを探る」「解決(改善)したい症状を患者の言葉で表現してもらう」などがあった。 これらの要素のなかには、既に我が国の精神科看護師によって用いられている技法であるものもあると考えられたため、わが国内で精神科訪問看護を実践している医療機関に対して協力を依頼し、現在行われている看護実践のなかにアドビアランス療法の要素が既に含まれているかどうかをヒアリング調査した。その結果、「自尊心の確立」「中立を守る」などの要素は多くの看護師が実践しているという認識であったものの、「嫌な治療経験を検討する」「アンビバレンスを探る」「認知的不協和を共有する」などの方略を用いている看護師は非常にすくなかった。これらの要素は患者の治療に対する積極性を高めるために有益と考えられるので、今後はこの要素を取り入れた訪問看護における介入法をさらに検討したい。
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