本研究は、在宅療養者を介護する男性介護者が、介護やそれに付随して起きる生活の変化や自身の認知の変化等を、どのように把握し、生活を維持・再構築していくために、どのように行動しているかを明らかにし、女性介護者との相違点や共通点を比較検討を通して、介護者が男性介護者に対してどのような援助をしていくべきかという指針を提案することを目的としている。 某市の訪問看護ステーションを利用している療養者と同居している、主介護者である男性介護者と女性介護者の双方に、介護開始前の生活と、介護を開始してから現在に至るまでの生活の様子についてインタビューし、両者の語られた内容の比較を通して、男性介護者の生活の再構築のプロセスの特徴を明らかにしていく予定である。 今回、調査を実施する某市では、訪問看護ステーションを利用している在宅療養者の介護者のうち、男性介護者は2割弱であり、男性介護者の属性は無職(定年退職後)、療養者との続柄は配偶者であることが多く、全国の実態と同じ傾向であることがわかった。また、文献検討を行い、男性介護者に関する研究の動向を調べるとともに、インタビューの構成について再検討を行った。 現在、わが国の男性介護者の属性は、定年退職した配偶者であることが多い。近年、男性介護者の介護状況や介護ストレス(負担感)に関する研究は散見されるが、男性介護者が男性として長年培ってきた生活観をどのように変化させ、家事や介護の技術をどのように習得し、生活を維持、再構築しているのかは明らかにされていない。また、抵抗を感じる介護に性差があることが推測され、抵抗を感じる介護をどのように克服しているかは明らかにされていない。これらのことについて、本研究のインタビューによる質的な分析を通して、明らかにしていけるのではないかと考える。
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