今年度は、精神科病棟において、患者本人に対する服薬心理教育の経験がある看護師を対象に、服薬心理教育で体験したこと、服薬心理教育に参加した後に自分自身で変化したと思うことについて、約60〜120分のインタビュー調査を行った。 インタビュー内容の逐語録を質的に分析した結果、看護師は服薬心理教育に参加して、「薬や病に対する患者の思いを聞く」「患者の変化を感じる」「患者同士の相互作用の力を感じる」「服薬や症状に対する自分自身の理解が深まる」「集団の中での患者を知る」といった体験をしていた。 それらの体験を通じて、「患者への理解の深まり」「患者に対する自身の対応の変化」「医師や他職種との協働の活発化」などの日常ケアにおける変化を感じていた。患者の理解では、患者の思い、理解度、認識に対する理解が深まったこと、患者の抱える課題や役割意識が集団場面で再現されたことなどから、それらを日常ケアで意識しながら関わるようになったという変化を感じていた。対応の変化では、患者の問いかけに対して、きちんと説明できる、分かりやすい表現で伝えることができる、他の患者も交えた関わりが持てる、病・薬についての話ができる、といった変化を感じていた。 しかし、これらの体験は、参加した服薬心理教育のタイプや、勤務していた病棟環境によって異なっており、これらの体験に影響する要因を検討することが今後の課題として示された。次年度以降は、今回の分析結果を軸として、様々なプログラムに参加した看護師にインタビュー調査を継続し、これらの体験への関連要因を整理する計画である。
|