今年度は、医療機関において精神障害を持つ方の家族に対する心理教育の経験がある看護師を対象に、家族心理教育で体験したこと、家族心理教育に参加した後に自分自身で変化したと思うこと、困難に感じたこと、困難をどのように乗り越えたか、家族心理教育に参加を続ける理由や動機について、約60分のインタビュー調査を行った。 インタビュー内容の逐語録を質的に分析した結果、家族心理教育の場面では、家族への理解が深まる、他職種や他病棟の看護師との関わりによって視野が広がる、専門職としてではなく1個人として家族の困難について考えられる、家族の変化・家族の強さを見ることができる、自分自身の私生活にも生かせる、疾患や治療に対する理解が深まる、疾患が治療についての説明の仕方が分かる、といった体験をしていた。 そのことにより、家族心理教育の場面以外においても、家族に対する見方が変化する(家族の気持ちに共感できる、家族自身のつらさに目を向けられる)、患者に対する見方が変化する(家族の中の患者として捉えられる)、患者・家族の良い面に目が向けられるようになる、患者・家族の良い面にフィードバックできるようになる、といった臨床場面での変化を感じていた。 困難に感じたこととしては、病院内に十分に知られてないこと、そのため家族心理教育への参加が勤務として保障されないことや、運営を看護師が担わなくてはならないことなど、組織的なサポートが得られにくいこと、などが挙げられた。 以上の結果から、家族心理教育は、家族をエンパワメントする援助技法であるが、家族へのエンパワメントの体験を通じて、自分自身の看護ケアの幅が広がり、自信を持つことができ、看護師自身がエンパワメントされていることが明らかになった。今後は、参加経験年数による比較等を行い、経時的な変化について検討することで、これらのプロセスをより詳細に検討する必要があると考える。
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