研究課題/領域番号 |
17F17007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
速水 洋子 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (60283660)
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研究分担者 |
LE HOANG NGOC YEN 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | ベトナム / ハンセン氏病 / 病と苦悩 / ケア / 癌生存者 / レジリエンス |
研究実績の概要 |
第一に、オーストラリア国立大学に提出した博士論文をもとにした単著の執筆である。Living leprosy in Vietnam: Care, affliction and agency in the shadows of a cure(ベトナムでハンセン氏病を生きる:治癒の蔭の苦悩と行為主体性)。オーストラリア国立大学出版によって採用が決まり、査読者に送る準備が整った。 第二に、同博士論文のための調査を元に、多くの投稿論文を執筆投稿した。①The Asia Pacific Journal of Anthropology の次号に掲載される。②Journal of Vietnamese Studiesに修正無しで採用された。③現在、査読コメントにしたがって修正中、④査読コメントを待っている状態。 第三に、ベトナムの癌患者に関する新しいプロジェクトに着手した。Surviving the ‘K disease’: Suffering, care and resilience among cancer patients in Vietnam”(「K」病を生き延びる:ベトナムにおける癌患者の苦悩、ケアとレジリアンス)。本プロジェクトは、長期に癌を患う人々が、病とどのように生き、向き合うかに焦点を当てる。ベトナムでは、公的な定義として5年間の生存者を癌生存者とする。本プロジェクトは、開発途上国における癌患者に対するケアと支援を明らかにし、潜在的には死に至る病を抱えた人間のレジリアンスと行為主体性について検証する。 昨年度は、予備的調査を開始し、南ベトナムで癌患者ケアを様々な場面で調査した。ホーチミン市立医薬大学大学病院におけるクリニック、 ビンドン県における癌生存者コミュニテイ、ドンナイ県の著名な仏教寺院が運営する伝統医薬クリニック、そして家庭環境の中で家族によって提供されるケアである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、何ヶ月もかけた改訂の後、単著の原稿が完成し、オーストラリア国立大学出版会により査読者に送る準備が整った。 第二に、2018年中に二つの投稿論文が、The Asia Pacific Journal of Anthropology (ANU, Canberra)とJournal of Vietnamese Studies (University of California, Berkeley)に掲載される。もう一本を現在改定中で、Medical Anthropology Theory誌の査読者によるコメントを待っている。もう一つは、Sojourn: The Journal of Social Issues in Southeast Asiaに投稿した。 第三に、ベトナム各地で癌生存者に関する新しいプロジェクトのための予備調査を実施した。この予備的フィールド調査により、現地インフォーマントとの良い関係を築くことができ、既に資料収集を開始した。これにより、ベトナムにおける癌の治療とケアについての実像を把握することができ、この病苦に対する治療を見いだそうと努力する患者の体験について理解に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、単著については、査読コメントを待って、改訂を進める。この改訂プロセスは、数ヶ月はかかると予想している。順調にいけば、2019年には、オーストラリア国立大学出版会から、出版されることになる。 第二に、学術誌投稿論文については、現在既に採用され2018年中に掲載される2本の他に、3本目を完了し、4本目も査読コメントが届き次第着手する。合わせて、学振のPD期間中に合計4本が出版されるようにしたい。 第三に、ベトナムにおける癌と共に生きる癌生存者の新しい調査プロジェクトについては、既に予備調査により、非常に重要なデータを収集することができている。癌生存者と緊密な関係を形成しつつあり、インフォーマントとできる限り頻繁に顔を合わせるために、新年度は何度もフィールド調査地を訪れることが重要である。今年度は、数回にわたって調査を実施してデータ収集を進める。 また、この調査で収集するデータに基づき、2019年には、このテーマで2本の論文を執筆する予定である。
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