本研究はケアの質を向上する方法および虐待予防策の具体化を目指している。これらの目的を達成するため、今回では、介護職員の不適切なケアに影響を与える要因について分析を行った(2次データを分析に使用した)。介護職員の不適切なケア行為に影響を及ぼす要因を明確にすることができれば、ケアサービスの質の向上に適した介入策を提案できるからである。 分析の結果、介護職員の一般的特性ではストレスのみが、職務環境ではチームワークと教育・研修環境が不適切なケアに有意な関連がみられた。 本研究の結果から次のような政策的・実践的示唆点が得られた。第一に、虐待が発生しやすいケアの状況、業務遂行に負担を感じるケア事例に対して対処戦略を共有するなど、職員のストレス軽減に向けた議論が必要である。 第二に、単に賃金水準、業務量などの労働条件を改善すれば不適切なケアが減少するといえないことから、労働条件を改善するための政策的介入以外に、利用者に良いケアを提供しようとする施設の自発的な努力(たとえば、チームワークや教育・研修の実施)を強化しなければいけない。 第三に、不適切なケアの減少に最も大きな効果があった教育・研修に充実した環境を構築しなければならない。 しかしながら、単純に職員の教育や研修を通じて不適切なケアを減少させることができるという画一的な考えから抜け出し、教育・研修がより効果的に機能できるようにカリキュラムの構成を検討しなければならない。
|