研究実績の概要 |
ナノリングの合成に関しては、いろいろな角度から検討を行って来た。まず、1,6-ジアミノピレンに2当量のイソフタルアルデヒドがイミンで結合したジアルデヒドを合成した。これと 1,2-エチレンジアミンをテトラクロロエチレン溶媒中、単層カーボンナノチューブ(SWNT)存在下で反応させたところ、生成したナノリングが SWNT を被覆したと考えられる生成物が得られた。 一方、ピレンの 2,7 位に2分子の 3-臭化ピレンが6位で結合した化合物とピレン-2,7-ジボロネートとの鈴木カップリング反応を行ったところ、この場合においても、生成したナノリングが SWNT を被覆したと考えられる生成物が得られた。上記の反応生成物とともに、現在、それらの構造を解析しているところである。 以上の当初予定していた研究計画に加えて、ピレン誘導体とそれに基づくピンセット、あるいはノギス形分子を合成し、それらと SWNT との錯形成定数の決定を行った。化合物の合成に関しては、申請者のグループで従来から行われた合成手法に従っており、また、錯形成定数の決定に関しては、分担者の Alejandro LOPEZ MORENO がスペインで行なっていた手法に基づいている。決定された錯形成定数は、ピレンで 13 程度であったのに対し、ピンセット形分子では、錯形成定数が2桁大きくなり、さらに、ノギス形分子では3桁大きいことが明らかとなった。
|