研究課題/領域番号 |
17F17038
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山下 正廣 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (60167707)
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研究分担者 |
BISWAS SOUMAVA 東北大学, 材料科学高等研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-07-26 – 2019-03-31
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キーワード | 単分子磁石 / 超伝導 / 電荷移動錯体 / 電子供与体 / 電子受容体 |
研究実績の概要 |
超伝導性単分子磁石を合成してその物性を測定することが最終的な研究課題である。 まず、ドナー分子として単分子磁石を用いて、アクセプター分子として伝動性の金属錯体を用いて電解酸化法により合成を試みてきた。しかしながらいずれも半導体であり、伝導電子と単分子磁石の相互作用は観測されなかった。そこで、ドナー分子とアクセプター分子を入れ替えて、様々な伝導性有機ドナーと、単分子磁性のアクセプター分子を組み合わせて電解酸化法を用いて合成を行ってきた。このために、伝導体としては有機ドナーとして有名なBEDT-TTF分子を用い、アクセプターとしてはDy(NCS)4単分子磁石を用いて、電解法により単結晶を作製することに成功した。 結晶構造は、BEDT-TTFはκー型のパッキング構造をとっており、BEDT-TTFの4量体で+1という珍しい酸化数であった。電気伝導度は室温から200K付近までは金属的挙動を示し、200kから100K付近までは半導体的挙動を示し、100K付近から低温まで再び金属的挙動を示し、11K で超伝導を示した。世界で始めての超伝導性単分子磁石の合成に成功したことになる。磁場を加えると超伝導温度が低下することがわかった。また、いずれの温度の超伝導性挙動のところに肩が観測された。これは、超伝導性と単分子磁石との相互作用によるものと推定される。 今後はこの超伝導性単分子磁石のバンド計算や、磁場効果や比熱やNMR測定など、詳しい物性測定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題は、「超伝導性単分子磁石の合成と物性」であるが、既に世界で始めての超伝導性単分子磁石の合成に成功した(BEDT-TTF)4(Dy(NCS)4。超伝導状態では完全反磁性体(マイスナー効果)を示すはずであるが、単分子磁石をアクセプターとして含んでいるために、超伝導性の挙動の部分に肩が観測される。これが、超伝導状態と単分子磁石の相互作用によるものと考えられる。これを証明するためには更なる意物性測定が必要である。いずれにしても単分子磁石を一種の強磁性体と考えると、世界で始めて分子系で、強磁性超伝導体の合成に成功したことになる。このような物質がこれまで分子系ではないために、全く新しい物性の出現が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
世界で始めて超伝導性単分子磁石の合成に成功したので、今後の展開で重要なのは更なる詳細な物性実験と理論的な解釈である。特に超伝導性と磁性の相関が大変興味深い点である。今後、バンド計算、磁場下の伝動性の測定、比熱、高圧化の磁性と伝動性の測定などを行う予定である。
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