研究課題
近年、イオンゲートなどを用いた電界効果トランジスタの研究が進み、半導体界面に高濃度のキャリア注入を行うことが可能になってきた。そこで、本研究では、非常に良質な表面あるいは界面を作りやすい有機半導体などの分子性結晶や薄膜を用いて、高濃度キャリアドープを行うことにより、強相関電子系の電子物性制御を行う。低温でスピン密度波相となる強相関π電子系と局在d電子スピンが共存する擬1次元π-d複合体や3次元Dirac電子系候補物質などを対象として、有機単結晶薄膜の作成と相制御を試みた。電解セルを用いて有機伝導体の単結晶薄膜試料を作成し、それをSiO2薄膜で覆われたSi基板、もしくはその表面上にAuの微小電極を作成した基板上に貼り付けて電界効果トランジスタを作成した。擬1次元系(DIETSe)2MCl4[M=Fe,Ga]塩の場合、細長い形状の結晶が得られ、微小電極上にのせることも出来たが、3次元Dirac電子系候補物質(BEDT-TTF)Ag4(CN)5の場合にはゴロっとした微結晶が出来、電解合成では薄い結晶は得られなかった。Si基板上に貼り付けたDIETSe塩の電気伝導度の温度依存性の測定を行ったところ、バルク試料とはかなり異なった振る舞いを示した。Si基板と試料の熱収縮率に大きな違いがあることが原因と考えられる。2Kで100Vまでゲート電圧を印加したが、顕著な変化は観測されなかった。また、ダイヤモンド構造をもち3次元Dirac電子系候補物質であるモット絶縁体(BEDT-TTF)Ag4(CN)5の高圧力による強相関電子系の電子物性制御にも取り組んだ。キュービックアンビルを用いて14GPaまでの超高圧下での伝導度測定に成功し、伝導度が著しく増加することを見出した。ダイヤモンドアンビルを用いた分光測定を行い、高圧下での電子状態について知見を得た。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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