本年度は、がん組織特有のバイオマーカーや特製の中から、特に低pHに注目し、酸性pH環境で分子構造が変化し、ゾルからゲルに巨視的は相変化を起こす超分子と高分子をハイブリッドさせたゲルを合成した。これは、実験室のシャーレで培養した細胞系だけでなく、実際にマウスなどの生物個体in vivoでも利用できるようにすることを目指しているからである。ハイブリッドする高分子としては、オリゴエチレングリコールやフォスファチジルコリン分子骨格を有するアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル型の水溶性高分子の用いることとし、この側鎖に超分子ゲル化剤をグラフトした。このグラフトにはアルデヒドとヒドラジドとの動的共有結合を用いるのが簡便で高収率であることを見出し、ポリマー/超分子ゲル化剤ハイブリッドの合成スキームを確立した。さらにがん細胞を標的化するために、葉酸リガンドをグラフトした。得られたハイブリッドのpH応答挙動実験から酸性でのゲル化を確認した。またゲルの構造を共焦点蛍光顕微鏡で観察すると、ナノ粒子状の会合体が数珠状にネットワークを形成していうることを見出した。細胞実験ではリガンド依存的にがん細胞へハイブリッドが取り込まれる挙動は今の所はっきりとはみられていない状況であり、分子設計の練り直しが必要と判断した。
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