研究課題/領域番号 |
17F17048
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研究機関 | 株式会社IIJイノベーションインスティテュート(技術研究所) |
研究代表者 |
長 健二朗 株式会社IIJイノベーションインスティテュート(技術研究所), 技術研究所, 所長 (10561087)
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研究分担者 |
BISCHOF ZACHARY 株式会社IIJイノベーションインスティテュート(技術研究所), 技術研究室, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-10-13 – 2020-03-31
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キーワード | インターネット計測 / 通信サービス品質 / モバイル通信 / 海底ケーブル / 通信サービス信頼性 |
研究実績の概要 |
本研究は、多様な通信サービス品質の提供を、共通基盤上でソフトウェア制御により実現する技術確立のための実証的研究である。アプリケーションや利用シーン別によるブロードバンド通信品質への要求を把握し、要求に応じたサービスレべルを実現するソフトウェア制御技術の確立を目指す。1年目、2年目の研究は主に現状の通信品質を把握するために3つの研究を行った。 (1)モバイル用にWebページを最適化する技術の定量的評価: Google社が推進しているAccelerated Mobile Pages(AMP)について、その仕組みと特性を明らかにし、ユーザの経験品質にどのような影響があるかをAMPを使用しない場合と比較し、ユーザが体感する品質とそのためのコスト(トラフィック量)について示すことができた。 (2) 海底ケーブルの共有に伴う障害時のリスク評価: 海底ケーブルの切断等の障害は復旧に何週間もかかるため長期的な通信品質を担保する上で極めて重要な要因であるが、一般ユーザがその利用状況を知ることは非常に難しい。本研究では、IPレベルで観測される区間遅延から対応する海底ケーブルを特定する手法の確立を目指している。 (3)オープンデータを使った各国のブロードバンドの性能と信頼性の比較評価: 各国のブロードバンドサービスを比較することは容易ではないが、米国FCCが行っているブロードバンドアメリカプロジェクトの公開データからISP毎の性能や信頼性を評価する手法を提案し、さらに、データに含まれる米国以外の30ヶ国についても提案手法が適用できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2018年度の研究成果は、それぞれのテーマで3つの論文にまとめ、いずれも国際学会で発表を行った。そのうち2つはACMのトップコンファレンスであり顕著な成果だと言える。 (1)モバイル用にWebページを最適化する技術の定量的評価については、モバイル通信のトップコンファレンスである ACM MobiCom 2019 に採択され、今年10月に発表を行う。(採択率はまだ公式に発表されていないが20%程度) (2) 海底ケーブルの共有に伴う障害時のリスク評価については、インターネット研究のホットトピックを発表するトップコンファレンス ACM HotNets 2018 に採択され発表を行った。(採択率は20.8%) (3)オープンデータを使った各国のブロードバンドの性能と信頼性の比較評価については、TPRC 2018に採択され発表を行った。(採択率は未発表)
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、まず現状の通信品質を把握する研究を行い、これを基にトラフィック制御の研究に発展させる予定であった。しかし、これまでに行った通信品質の把握に関する研究が顕著な成果を挙げているため、これらの成果をまとめることに主眼を置いて研究を継続する予定である。並行してトラフィック制御の研究も進めるが、品質計測研究と同レベルの成果をまとめるには時間的に難しいと思われる。
海底ケーブルの研究に関しては、すでに基本的な手法の有用性を示すことができたので、手法の改善と精度向上に加えて、第三者がAPIを使って利用できる公開データベースの構築を行う。将来的には、一般ユーザがtracerouteの結果からどの海底ケーブルが利用されているかを知ることができるようになるサービスが実現できると考えている。
ブロードバンド信頼性の国別比較については、提案手法をFCCデータ以外に適用する試みを行う。特に、より多くの国をカバーするRIPE Atlasのデータの利用が可能になれば、日本を含むほとんどの国の比較ができると期待している。
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備考 |
IIJ技術研究所では計測や解析を通じてグローバルなインターネットの信頼性向上に貢献する研究を行っています。本稿では、インターネットを支える海底ケーブルを理解することで、信頼性の向上を目指す研究について報告します。なお本稿は、ACM HotNet2018で発表した論文の要約です。
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