研究課題/領域番号 |
17F17063
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水上 成美 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (00339269)
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研究分担者 |
BAINSLA LAKHAN 東北大学, 材料科学高等研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | スピントロニクス / ホイスラー合金 / スピンギャップレス / 結晶成長 / 磁気トンネル接合 / 電圧効果 |
研究実績の概要 |
スピンギャップレス半導体は、アップスピンがギャップレス半導体、ダウンスピンが絶縁体である特異な物質である。ハーフメタル的な電子構造を有するため、磁気抵抗素子に応用すれば巨大な磁気抵抗比を発現する可能性がある。同時に、半導体的な特性を有するため、電界効果でスイッチングできる新規スピントロニクス素子が創成できる。本研究では、スピンギャップレス半導体の候補となる4元系ホイスラー合金の薄膜結晶成長、界面物性、デバイス物性を研究し、情報処理デバイスへの応用を目指す。 本年度はまず、スピンギャップレス材料の候補であるCoFeMnSiの単結晶薄膜の作製を行った。基板と下地には、各々単結晶酸化マグネシウムとクロムを用いた。CoFeMnSi薄膜を下地の上に積層し、真空中の後加熱処理により規則化した。X線回折を用いて結晶構造の評価を行ったところ、後加熱の温度が約500から600度において、規則度の高い試料が得られことが分かった。またそれらの試料の磁化測定から、磁気モーメントがバルクの報告値程度であることが分かった。これらの結果は作製した試料がバルク試料に近い規則性を有することを示唆している。サイトディスオーダーについて知見を得るため、放射光を用いた磁気円ニ色性の評価を行い、磁性元素の磁気モーメントの評価を行った。その解析から、試料はいわゆるY型の結晶構造をとっている可能性があることが分かった。 次に。その電子状態に関する知見を得るため、この材料を電極に有する磁気トンネル接合を作製した。対抗電極はCoFeとし磁気抵抗を評価したところ、低温で500%を超えるトンネル磁気抵抗比を見出した。この結果はこの材料のハーフメタル性を実証するものであると考えられるが、原子不規則のスピンギャップレス状態への影響を考量することが重要であることが、第一原理理論計算との比較から明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
スピンギャップレス材料の候補であるCoFeMnSiを電極に有する磁気トンネル接合において、低温で500%を超えるトンネル磁気抵抗比を見出した。また室温で100%を超える磁気抵抗比を得た。スピンギャップレス材料でこのような大きな磁気抵抗比を報告した例はなく、研究が予想以上に順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
他の組成の4元系ホイスラー合金単結晶薄膜を作製し、スピンギャップレス特性や磁気抵抗を調べることで、スピンギャップレス特性の材料物理について明らかにする。並行して、材料の極薄膜成長を検討し、界面磁気異方性や電界誘起磁気異方性について研究する。
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