研究実績の概要 |
昨年度得られた研究成果を論文化した。スピンホール効果は物質に不純物をドープし、電子の散乱頻度を大きくすることでより大きなスピンホール効果が発現することが知られており、このような機構で発現するスピンホール効果は外因性スピンホールと呼ぶ。一方、物質のバンド構造(ベリー位相)に起因した内因性スピンホール効果については、これまで主に単体の元素についてその大きさが評価されてきた。本研究では、スピン軌道相互作用が比較的小さいCoとGaの合金を作製してスピンホール効果を調べたところ、スピン軌道相互作用が大きい5d遷移金属並みのスピンホール角(0.05程度)を有していることがわかった。第一原理計算を用いて解析した結果、Co-Ga合金におけるスピンホール効果はベリー位相に起因する内因性スピンホール効果で説明でき、またCoのd軌道とGaのp軌道の軌道混成効果により、大きなスピンホール角が得られることがわかった。今後、より大きなスピンホール角を有する物質を設計するにあたり、重要な指針を与える結果があると考えられる(Lau et al., PRB, 2019)。 また今年度は、カイラル磁気構造が伝導特性に与える影響や、ヘテロ構造においてカイラル磁性を誘起するジャロシンスキー守谷相互作用の評価を行い、論文を発表した。さらにスピン流を生成できる新たな物質の候補として、BiやSbなどのトポロジカル物質を使った合金系を調査した。今後、スピン流生成効率などの指標を報告する。
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