研究課題/領域番号 |
17F17070
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
遠藤 恭 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50335379)
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研究分担者 |
PATI SATYA 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 強磁性共鳴 / スピン波共鳴 / スピンデバイス / スピン論理演算回路 / 磁性超薄膜 / イットリウム鉄ガーネット / Ni-Fe細線 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、新規省エネ型スピンデバイスの構築に向けて、スピン波共鳴の観測が可能な磁性材料のデバイス設計指針を確立することを目的としている。本年度の研究実績は以下の通りである。 1. 磁性超薄膜におけるスピン波共鳴の最適化を行うにあたり、磁性材料としてイットリウム鉄ガーネット(YIG)、パーマロイ(Ni-Fe)を選択し、それらの薄膜におけるスピン波共鳴についてブロードバンド強磁性共鳴(FMR)測定法を用いて検討した。なかでも、YIG膜に関しては、膜厚が薄い場合にはPt下地膜上にYIG膜を積層した状態で高温大気中熱処理を施すと、ランダム配向の多結晶膜の作製が可能である。この方法で作製したYIG膜では線幅の鋭い強磁性共鳴(FMR)ピークを観測でき、非常に弱いスピン波共鳴ピークもFMRピークの周辺にわずかに観測できる。一方で、十分に厚い膜厚の単結晶膜の場合には、膜面垂直方向に複数の急峻なスピン波共鳴ピークの発生をFMRスペクトルから確認できる。 2. 磁性二次元構造体におけるスピン波の電圧制御に関する基礎検討として、磁性二次元構造体における閉じ込め型スピン波共鳴に関する検討を行った。磁性二次元構造体としてNi-Fe細線を選択し、細線表面に300 nm厚のSi-O絶縁層を堆積させて、その上から高周波伝送線路を集積化させた試料を試作した。膜厚50 nm以下のNi-Fe細線では細線幅に関係なく、スピン波共鳴を観測できなかった。一方、膜厚75 nm、細線幅20 umのNi-Fe細線では、FMR共鳴に加えて第三次モードのスピン波共鳴を観測することができた。この膜厚による違いは、高周波伝送線路が細線表面から離れすぎていて細線の磁化を励磁しにくいことによるものと考えられる。以上の結果は、絶縁層の厚みを薄くすることにより、膜厚の薄いNi-Fe細線でもスピン波共鳴の観測が可能性であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「磁性超薄膜におけるスピン波共鳴の最適化」および「磁性二次元構造体におけるスピン波の電圧制御に関する基礎検討」について検討した。とりわけ、スピン波の電圧制御に関する基礎検討に関して、Ni-Fe細線における閉じ込め型スピン波共鳴モードの観測に成功した。磁性二次元構造体において閉じ込め型スピン波を発生させるためには細線と高周波伝送線路との間に存在する絶縁層の厚みが鍵を握っていることがわかった。以上に示した成果から、本年度はおおむね順調に本研究課題を遂行できていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の段階で、二次元平面方向でのスピン波共鳴を評価するための信号発生及び検出用の高周波伝送線路のマスク設計・作製を完了済みである。したがって、次年度は前半の段階でスピン波共鳴の最適化(材料)を図り、前半の早い段階から磁性二次元構造体での二次元面内スピン波共鳴評価を行い、その電圧による制御を試みる。
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