研究課題
東日本大震災津波が来襲した沿岸域のうち,長大な砂浜海岸を有する仙台海岸においては海浜・河口砂嘴に対して大規模な地形変化がもたらされた.このうち,一部は津波来襲直後に急速な回復を示した箇所があるが,5年以上が経過した現在においても大規模な地形変化が残存している箇所も多く見られる.この様な津波による大規模地形変化の残存箇所は漂砂系に対してシンクとして作用することなどから,河川の土砂供給,および河口周辺の沿岸域土砂収支に変容が生じていると考えられる.さらに,2015年9月の関東東北豪雨は既往最大を記録した箇所もあり,土砂系に対してさらに大きな擾乱を与えている.そこで,甚大な被害を受けた仙台海岸を対象に,被災前後の広域沿岸土砂収支の変容を明らかにし,津波および大規模洪水の影響を定量的に評価した.その結果,津波前後の砂面高さの変化量と津波後からの砂面高さの年変化率を回帰式により求めることで,海浜地形の回復過程の現状が確認できた.主要な結果として,井土浦のラグーン地形の回復,閖上漁港防波堤南約2kmまでの回復傾向,阿武隈川河口テラスの回復が確認できた.これらの現状を踏まえEOF解析を行った結果,各領域における回復過程を成分毎に抽出することに成功し,時空間的な特性が明らかになった.主な結果としては領域Aでは津波後,沿岸漂砂により海岸全体での汀線での侵食傾向が見られた.またラグーン地形の回復過程は沿岸漂砂の影響が強く,ラグーン沖での深刻な侵食とラグーン地形の回復が同じ時間スケールで生じていることが分かった.以上の成果は,今後の仙台海岸の海岸管理に資する重要なものと評価される.また,その知見は今後発生が予想される東海・東南海・南海地震津波の来襲などの各地においても活用できるものである点でも,実務上の重要性が高い.
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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