研究実績の概要 |
経気道暴露問題の本質的理解のためには流体工学的な側面からの研究蓄積が求められている.しかしながら,倫理的な観点より,実人体を用いた被験者実験(in vivo)には大きな制約がある.そのため動物実験を実施してその結果を人間に外挿するか,模擬的な呼吸器系モデルを作成した上で実験室実験(in vitro)を行うことになる.実験の第一段階としてマウスやラット等の小型の齧歯類動物を用いた実験や小形哺乳類であるイヌやサルを対象とした動物実験を行うことが一般的であるが,そのインパクトを人体スケールへ換算する必要がある.経気道暴露問題をラット等の小形齧歯類やイヌ,サル等の小形哺乳類と,人間で定量比較するためには,両者の鼻腔内流れ場の相違と,微粒子輸送現象の差違,気道内沈着分布の差違を定量的に把握していることが本質的に重要な課題となる.しかし現状では医学的な暴露試験に使用されているラットの鼻腔を対象とした速度場に関する詳細な実験結果,CFD解析結果(in silico)に関する報告はほぼ皆無といって良い状況にある. このような背景のもと,Lu Phuong博士との共同研究では,サルとヒトの鼻腔・口腔から気管支細分岐までの幾何形状を詳細に再現したうえで,経気道曝露による生理影響を定量的に評価するための数値気道モデルの開発に取り組んだ.数値解析モデルの開発に加え,その解析精度検証のために,鼻腔内速度場・温度場・粒子拡散場を対象とした可視化計測技術の開発にも取り組んだ.
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