放射性廃棄物や鉱山廃水などに含まれる放射性核種や有害元素の除去は、人間が様々な資源の開発や先端産業の育成を進める上で避けられない課題である。本研究では、放射性核種や鉱山廃水中で陰イオンを形成し、有害元素として重要なヨウ素(ヨウ化物)、ヒ素(ヒ酸)、アンチモン(アンチモン酸)の効率的な除去に関する研究やその除去機構の解明を行った。ヨウ化物については、これまでも陰イオンの除去に有効とされてきた層状水酸化物(LDH)について、ヨウ化物と親和性の高いビスマスを担持・燒結したMg/Al/Bi系LDHを開発し、生成したBi2O3ナノ粒子への吸着によるヨウ化物の除去について研究を進めた。Mg/Al LDH、Mg/Al/Bi LDH、Bi2O3に対するヨウ化物イオンの等温吸着線および吸着率の時間変化を調べたところ、最大吸着量および吸着速度定数はそれぞれ161、202、57 mg/gおよび0.036、0.0290、0.0032 min-1となり、Mg/Al/Bi LDHが最も多量のヨウ化物イオンを吸着することが分かった。EXAFS解析から、Mg/Al/Bi LDHに吸着されたヨウ化物は、Bi2O3に吸着されたヨウ化物と同様の構造を示すことが分かった。これらは、ヨウ化物除去剤として、今回開発したMg/Al/Bi LDHが有効であることを示す。一方、ヒ酸とアンチモン酸については、鉱山廃水から得られた水酸化物にでんぷんを添加し燒結させた鉄酸化物を用いた除去法を開発した。XAFS解析からこの物質はferrihydriteとmagnetiteの混合物であり、これらイオンの吸着は前者が担うのに対して、magnetiteが共存することで、懸濁溶液からこの吸着媒を磁石で容易に集められ、有害元素の最終的な除去に必要であるが時間がかかり目詰りなど問題の多いろ過作業が、不要ないし効率的に行える点に特徴がある。
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