研究課題/領域番号 |
17F17085
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関 修平 京都大学, 工学研究科, 教授 (30273709)
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研究分担者 |
MA JUN 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | ナノワイヤ / 放射線 / パルス / 重合 / 電子付着 |
研究実績の概要 |
本研究課題において、(1) 有機薄膜への高エネルギー荷電粒子(重粒子線)照射を用いたナノ構造体の形成、(2) パルス電子線照射を用いた短寿命電子の生成とそのヌクレオシドへの電子付着と結合解離過程、について研究を進めた。(1)については、まず、これまで受入研究グループが開拓してきた低分子薄膜の粒子線の飛跡に沿った重合反応によるナノワイヤ形成を発展させるため、機能性低分子としてジアセチレン誘導体を選択し、サイクロトロンで加速した350 MeV 129Xe粒子を照射し、照射後に有機溶媒で現像することによりナノワイヤの単離・観察を試みた。多くの誘導体でナノワイヤは観測されず、重合物と思われるフラグメントが原子間力顕微鏡観察で見られたことから、十分な反応効率を得ることができず、有機溶媒の現像操作に耐えうるナノワイヤが形成されていないことが予想される。誘導体探索により化学構造の最適化を行っており、フラグメントの大きさが向上していることから、指針は得られていると考えている。液晶相での粒子線重合に関しては、適切な分子量と溶解性を有する材料の探索中である。(2)については、リボチミジンがジエチレングリコール溶媒下でのパルス電子線照射により結合開裂が起こることが示唆される結果を得た。電子の溶媒和の初期過程における電子付着から始まる反応であることを過渡分光法により捉えており、短寿命電子が核酸に与える損傷については詳細に調べた例がなく、非常に重要な知見を得たと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ構造体形成の研究展開については、開始から9ヶ月を経て材料探索に予定よりも時間がかかっているものの、材料指針が明らかになりつつあるため、次年度の進展につながる結果であると考えている。パルス電子線照射による核酸の反応に関しては、当初予定していない研究展開であったが、興味深い現象に遭遇したため、予定外の研究進展であると捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
ジアセチレンナノワイヤについては、予定よりも遅れが見られたものの、年度後半に進展の兆しが見られたため、これを中心に進めていく。液晶相での粒子線照射によるナノ構造化については、適切な誘導体がまだ見つかっていないため、長鎖アルキルを過剰に持たない誘導体を探索する。電子線照射を用いた核酸誘導体の結合開裂に関しては、生成化学種の特定を進め、学術論文等として発表する予定である。
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