研究課題/領域番号 |
17F17099
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
園元 謙二 九州大学, 農学研究院, 教授 (10154717)
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研究分担者 |
PEREZ RODNEY 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 抗菌ペプチド / バクテリオシン / 乳酸菌 |
研究実績の概要 |
乳酸菌が生産する抗菌ペプチドであるバクテリオシンは、一般のタンパク質と同様にリボーム上で合成される抗菌ペプチドで、安全な抗菌物質として食品保存料への利用が期待されている。さらには、抗生物質の安全な代替品としての利用、とくに抗生物質耐性菌への利用も検討されている。我々はこれまでに多種多様な乳酸菌バクテリオシンを見出してきた。乳酸菌バクテリオシンは、その構造遺伝子を改変するのみで比較的容易に多様な改変体を得ることができ、抗菌活性の強化・改変を図ることが可能と考えられる。そこで本研究では、我々が発見した乳酸菌バクテリオシンのうち、とくに、強力な抗菌活性を示す、環状バクテリオシンenterocin NKR-5-3B(Ent53B)とリーダーレスバクテリオシンlacticin Q(LnqQ)を対象とした。すでに構築されているEnt53BおよびLnqQの異種分泌発現系を基に、種々の改変体を構築し、その評価と抗菌活性の強化を試みている。 Ent53BおよびLnqQはグラム陽性細菌への広い抗菌スペクトルと強力な抗菌活性がすでに認められているが、種々の薬剤耐性腸球菌に対しても強い抗菌活性を示した。また、異種発現系を用い、ランダム変異および部位特異的変異によって構築したEnt53BおよびLnqQの改変体を評価したところ、一部の変異体で抗菌活性が低下した一方で、抗菌活性が大きく向上する変異も認められた。これらの結果より、Ent53BおよびLnqQの特定の位置あるいは特定のアミノ酸残基が抗菌活性に大きく影響することが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ent53BおよびLnqQの抗菌活性の評価はおおむね順調に進行した。また、多数のEnt53BおよびLnqQ改変体を構築することに成功し、その評価を進めることができた。抗菌活性の向上したEnt53BおよびLnqQの改変体を取得できたことに加え、Ent53BおよびLnqQの抗菌活性に必須な部位や重要なアミノ酸残基を見出すことができた。これらの結果は、Ent53BおよびLnqQについて今後さらに多剤耐性菌への抗菌活性・選択性の強化を図る上で重要な情報となる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究はおおむね順調に進展しているため、引き続き、Ent53BおよびLnqQの改変体の構築と評価を行い、多剤耐性菌への抗菌活性・選択性の強化を図る。構築と評価のサイクルをさらに進めることで、抗菌活性・選択性の一層の強化が図られる。また、抗多剤耐性菌活性を有する新奇バクテリオシンについて、本研究室が有する新奇乳酸菌バクテリオシンリソースからの探索、および新たな生産乳酸菌の探索を行う。将来的に、Ent53BやLnqQ、および種々の新奇バクテリオシンより得られる成果を総合することで、さらに効果的な抗多剤耐性菌活性をもつ抗菌ペプチドの設計・創出を図る。
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